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循環器病治療の最新情報2016

Part Ⅳ 不整脈
ここまで来た不整脈に対するデバイス治療

講演内容

 最初に林氏は、講演では不整脈に対するデバイス治療の進歩をたどると共に、デバイス治療の内容を徐脈性不整脈・頻脈性不整脈・心不全に分けて説明し、デバイス治療の今後の展望についても触れたいと述べた。

植込み型デバイスの種類と治療変遷

 林氏は植込み型デバイスとして、ペースメーカ、植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator: ICD)、心臓再同期療法ペースメーカ(cardiac resynchronization therapy pacemaker:CRT-P)、両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(cardiac resynchronization therapy defibrillator:CRT-D)を挙げた。同氏によれば、このうち最も使用されているのがペースメーカで、徐脈性不整脈に対してペーシングによって脈を補うシンプルなデバイスとして知られる。ICDは頻脈性心室性不整脈に対してショック治療を行う(徐脈ペーシングも可)。CRT-Pは心不全に対して両室ペーシングを行う(徐脈ペーシングも可)。CRT-DはCRT-PにICDの機能も兼ね備えており、ショック治療、両室ペーシング、徐脈ペーシングのすべてを行う、というものである。

 続いて同氏はこうしたデバイスの我が国における変遷に触れ、1974年には最初のペースメーカが承認され、1996年には第4世代のICDが使えるようになり、2004年にはCRT-P、2006年にはCRT-Dが承認されたという。

 同氏は本邦における植込み数に関してこの10年程の推移をグラフで示したが、直近の数字はペースメーカが2012年に59,441台で2013年に59,487台、ICDが2013年に6,373台で2014年には5,830台、CRT-Pは2013年に935台で2014年には1,049台、CRT-Dは2013年に3,325台で2014年には3,356台 ※1。「ペースメーカは高齢化に伴い年々植込み数が増え続けてきており、2013年時点では60,000人近くに植え込まれている。ICDは1996年の承認から飛躍的に植込み数を伸ばしたが、2013年をピークに少し頭打ちの状況のようだ。2014年までの時点ではCRT-Dも同様である。注目すべきはCRT-Pで、徐々にではあるが植込み数が増加している。CRT-Pもペースメーカと同様、その増加には高齢化による影響(CRT-Dは厚みがあるので、高齢でやせ型の患者には負担が大きい)、さらには心不全治療に特化して予後改善をはかる症例が増えているためと考えられる」(林氏)。

徐脈性不整脈に対するデバイス治療

 徐脈性不整脈のうち、ペースメーカの対象となるのが洞不全症候群と房室ブロックであり、体外式と植込み式(心房と心室のどちらかを監視するシングルチャンバー、心房と心室の両方を監視するデュアルチャンバー)がある。最近ではリードレスペースメーカも登場している。

 ペースメーカ治療により、徐脈症例の心拍数を増加させ、心拍量を増加させる。また、心拍数がある一定の値を下回らないように、必要に応じて電気刺激(パルス)を加えて、心筋を収縮させる。このパルスは、心電図波形としてはスパイクとして捉えられる。ペースメーカ治療により、めまい・だるさを改善し、健常人と同じ生活に復帰させることができる。

 ペースメーカは1932年、Albert Hymanが考案した“体外式経胸壁人工ペースメーカ”から始まった。同ペースメーカは主動の時計式ジェネレータが動力源で、胸壁に刺した針を通して刺激するというものであった。針刺激を引き起こすのにハンドルを回転する必要があった。1958年にはFurmanらによる移動式の“体外式経静脈ペースメーカ”が登場した。同年にはSenningらの“植込み型人工ペースメーカ”も登場した。

 林氏によればペースメーカは、デバイス本体の小型化・軽量化、そしてバッテリの長寿命化という形で飛躍的に進化してきた。バッテリに関しては、充電式水銀電池、原子力電池(数年のみ)、ヨウ素リチウム・バナジウム電池と変遷をたどった。1950年台は、重さが300gで電池寿命は数カ月だったが、現在では、重さ20gとなり電池寿命は約10年以上となっている。

 ペーシングリード(心筋電極が付いた導線)も安定性と耐久性が向上した。心外膜リードから心内膜リードとなり、リード材料や先端形状の改善が進んだ。かつては心内膜に留置するだけの経静脈タインドリードが主流だったが、今では心内膜にねじ込み型のスクリューインリードが広く使われている。
「スクリューインリードの登場により、狙った部位に安定した形で留置できるようになった」(林氏)。

 ペースメーカのプログラム機能も進化し、より通常の洞調律に近い形の脈を得るための生理的ペーシングが行われるようになった。すなわち、心室のみをペーシングするVVIペースメーカから、血圧維持のために心房同期の重要性に目が向き、心房・心室順次ペーシングという生理的なDDDペースメーカへと進化した ※2。さらに現在では、体動や呼吸数・QT間隔・体温などの変化をセンサーで感知し自動的にペーシングレートを上昇させるという心拍応答機能も付いている。また、洞不全+軽度房室伝導障害のある患者では、なるべく右室ペーシングを控えるのが望ましいので ※3、こうした症例のために右室ペーシング最小化プログラムも一般的に備わっているという。

 続いて同氏は、最近登場したリードレスペースメーカについて触れた。リードレスペースメーカは、従来のように本体を皮下に植込んでリードと接続するのではなく、リードレスの本体を経静脈的にカテーテルを介して右心室に留置する方法である。現行のリードレスペースメーカはVVI型なので、適応疾患は房室ブロックを伴う徐脈性心房細動、活動性低下または余命が短い房室ブロック、心停止が少ない洞不全(徐脈頻脈症候群)といったものに限定されている。さらに、リードの経静脈アクセス困難・不能例、デバイス感染(易感染症例)、三尖弁術後例、透析症例なども良い適応になるという。しかし「VVI型なので生理的ペーシングということでは逆行する形になる」(林氏)。今後は生理的なDDD型の登場が期待されているとのことである。

頻脈性不整脈に対するデバイス治療

 頻脈性不整脈(心室頻拍:VTと心室細動:VF)に対して使用されるICDは、VTに対する抗頻拍ペーシング(anti tachycardia pacing: ATP)およびカルディオバージョン(QRS同期)、VFや無脈性VTに対する電気ショック治療(電気的除細動:QRS非同期)などを行い、突然死を予防しようとするものである。

 林氏によればVT治療の場合、VTに対するゾーンを設定して、それ以上の心拍数になった時はまずATPというVTより少し早い心拍数でペーシングして洞調律に戻す。ゾーン設定は複数回行うことができる。ATPが無効でVTゾーン内で頻拍が持続している場合には、ICDは充電に入りQRSに同期したカルディオバージョンに切り替わる(図1)。

図1 心室頻拍(VT)に対する抗頻拍ペーシング(ATP)とカルディオバージョン

図1 心室頻拍(VT)に対する抗頻拍ペーシング(ATP)とカルディオバージョン ※4

 続いて林氏は、ICDの歴史について概観した。それによると、ICDの考案者であるMichel Mirowski氏は、彼の直属の上司(Harry Heller教授)が突然死したことを受けて、ICD開発に乗り出したという。Heller教授は頻発する持続性頻拍のために数回の入院による薬物治療を受けていたが、1966年、一次軽快して退院した2週間後に自宅で不整脈により突然死したのである。

 1966年に突然死を防ぐ機器の概念の探索を始めたMirowski氏は、動物実験を経て1980年には初めて機器を植込む臨床治験を開始した。

 1980年代のICD(第1~第4世代)は大型デバイス(145cc、250g)で、腹部植込みだった。全身麻酔による開胸術も必要で、複数の切開創が残った。長期入院加療を必要とし、外科的療法による合併症もあり、術中死亡率9%以上だった。非プログラマブルデバイスで、心外膜に貼ったパッチからの高エネルギーショック療法のみで、電池寿命は約1.5年、米国年間植込みは1,000症例以下だった。

 しかしICDも小型化、高出力化、長寿命化が進み、現在(第5世代)では小型化(30cc、生理的形状)によりペースメーカ同様に胸部植込みとなり、VTやVFにおける最前線療法となっている。部分麻酔(conscious sedation)による単一の切開創で済み、経静脈リードを用い、入院加療も短期である。手術の合併症は低頻度で、術中死亡率は1%以下。治療オプションとしてのプログラムも豊富である。また、心房のみにリードを留置するシングルチャンバーと心房と心室にリードを留置するデュアルチャンバーがある。電池寿命は約8年と長い。日本の年間植込み数は、さきほど林氏から紹介があったように2013年が6,373台、2014年が5,830台。   

 林氏によれば、ICDはこうしたデバイス本体の発展に加えて、ショックを与えるリード(ショックリード)にも発展がみられる。ショックリードの先端は、ペーシングやセンシングなどのためにTip、Ring、RVコイル、SVCコイルの4部分があり、これらをICDに接続するため旧型では3本のリードが必要だったが(TipとRingは同じ1本で良い)、新型では1本で済むようになっているという。「従来は接続リードが多く注意が必要だったが、コンパクトでシンプルになった。しかも感染などによりリード抜去が必要になったときにも対応できるような素材・形状(DF4リード)となっている」(林氏)。

 しかし「ICDはまだ幾つかの問題を抱えている。その中でも一番大きいのが、不適切作動という問題だ」と林氏はいう。
同氏によればICDの不適切作動とは、ICDが本来の治療ターゲットであるVTとVFではなく、それ以外の非治療ターゲットにより誤作動してしまうことである。こうした非治療ターゲットには、心房細動・心房頻拍・洞性頻脈・上室性頻脈・T波オーバーセンス・リード断線ノイズ・電磁干渉などがあるという。
「ICDが、非治療ターゲットを治療ターゲットであると勘違いすることで不適切作動が生じてしまう。いかにしてVTとVFを逃さず、同時に、いかにしてVTとVFだけを治療するかが大きな課題である。しかも適切作動、不適切作動を問わず、できるだけショック作動を減らすこと(ショックリダクション)が求められている」(林氏)。

 ショックリダクションの3本柱として同氏は、Painless Therapies、Device Programming、Sensing&Detection Algorithmsを挙げる(図2)。「メーカー各社で開発に発展がみられ、状況はかなり良くなっている」(林氏)。

図2 ICDの発展:プログラム機能

図2 ICDの発展:プログラム機能
╶╴ショックリダクションの3本柱╶╴

 続いて林氏は、ICDの発展をめぐる話題としてS-ICD(subcutaneous implantable cardioverter defibrillator:完全皮下植込み型ICD)とWCD(wearable cardioverter defibrillator:着用型自動除細動器)を取り上げた。

 S-ICDはVFだけを停止させるもので、皮下(左の腋窩)に本体を植込み、リードも胸骨左縁のやはり皮下に植込むので、従来のような経静脈リードは不要である(本シリーズの草野研吾氏の講演の図2・3参照)。

 林氏によれば従来のICDに使われていた経静脈リードには解剖学的限界(静脈アクセスの問題)に加え、植込みに伴うリスク(心嚢液貯留や心タンポナーデ・心穿孔・気胸・リードの位置ずれ・心内膜炎・全身感染・死亡など)、リードの不具合に伴うリスク(不適切なショックや治療の未実施など)、抜去に伴うリスク(血管解離・血管穿孔・血管閉塞・弁の損傷・出血・タンポナーデ、全身感染・死亡など)、三尖弁逆流といった問題点があった。「S-ICDは、本体もリードも心臓に触れずに血管外から留置できるので、経静脈リードの問題点を回避するための1つの選択肢となっている」(林氏)。

 同氏はS-ICDの最適候補としてICDの適応だが、静脈アクセスがない、繰り返す経静脈リードの感染や断線、腎不全・糖尿病・易感染性などを有する症例を挙げる。妥当な候補としては、遺伝性不整脈(Brugada症候群やQT延長症候群)のある若年患者(VFのリスクがある場合)、VFの一次予防適応患者、VFによる心停止の既往歴患者、人工弁使用患者(VFのリスクがある場合)が考えられる。また、S-ICDはVFだけがターゲットであるため、徐脈ペーシング適応患者やATPが有効と考えられる反復性の単形性VT患者は不適切候補となる。心機能が低下しておりCRT(心臓再同期療法)が必要な患者も不適切候補だという。
「植込むための切開創も小さく簡便にできるので、S-ICD今後も発展していくと考えられる」(林氏)。

 続いてWCDを紹介した林氏は、WCDを近年は街の要所に設置されているAED(自動体外式除細動器)にたとえ、「WCDはAEDを小さくしてベストにして着ているようなもの」と話す(本シリーズの草野研吾氏の講演の図1参照)。

 衣服の下に着用するこのベストには、5サイズが展開されており伸縮性がある。ベストの内側には直接肌に触れる形で、除細動電極と心電図電極が取り付けられている。除細動電極は、通常はドライで、除細動前に自動で導電性ジェルが放出される。また、4つの心電図電極(ドライ)で常時、心電図を監視する。これら電極と繋がっているコントローラ(重量640g:肩から掛けるか、腰回りに装着)が不整脈(VT、VF)を検出した場合は、バイブレーション、サイレンアラーム、音声とスクリーン表示で患者に警告を与える。コントローラにはバッテリも含まれる。またコントローラにはレスポンスボタンがあり、不整脈検出時に患者が押すことで、患者に意識がある場合は不必要な除細動を延期することができる。

 WCDの患者選択について林氏は、「急性心筋梗塞後の心機能低下例で、3カ月位の経過で改善が見込まれる症例に使われることが多い。つまり、ICDを植込むかどうか少し考える余地が欲しい症例のブリッジとして使われている。ICDの適応があるが、患者さんの同意がなかなか得られないといった状況でも積極的に使われている」と話す。
日本不整脈心電学会は「WCDの臨床使用に関するステートメント」を発表しており(2017年9月改訂)、その中で“WCDの使用を考慮する病態”についても述べている(本シリーズの草野研吾氏の講演の末尾の注の ※5を参照)。

心不全に対するデバイス治療

 続いて林氏はCRTについて紹介した。CRTとは、右心房、右心室+左心室(冠静脈洞内)にリードを留置することで、①心房と心室の同期改善、②心室内伝導遅延の同期改善、③心室間(左室-右室)伝導遅延の同期改善、を行う治療法で、左脚ブロックに代表される心室内伝導障害を有する薬剤抵抗性の慢性心不全例が対象となる。CRTにはCRT-PとCRT-Dがある。

 前述のように、我が国では2004年にCRT-Pが、2006年にCRT-Dが承認され保険適応となった。我が国の「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」では、ClassⅠ(有益であるという根拠があり,適応であることが一般に同意されている)としてCRT-Pは「最適の薬物治療でもNYHAクラスⅢまたは通院可能な程度のクラスⅣの慢性心不全を呈し、左室駆出率35%以下、QRS幅120msec以上で、洞調律の場合」、同様にCRT-Dは「最適の薬物治療でもNYHAクラスⅢまたは通院可能な程度のクラスⅣの慢性心不全を呈し、左室駆出率35%以下、QRS幅120msec以上、洞調律で、植込み型除細動器の適応となる場合」となっている ※5

 なお2014年にはCRT-Dの適応が拡大となり、「最適の薬物治療でもNYHAクラスⅡの軽症心不全を呈し、左室駆出率30%以下、QRS幅150msec以上、洞調律で、植込み型除細動器の適応となる場合」となった。

 林氏によれば、さらなる予後改善を視野に置いたこの適応拡大により、従来の中等度~重症心不全から、軽症心不全すなわち自覚症状は比較的軽度であるが、従来の適応より低心機能で、かつ心室内伝導障害がより進展した症例まで含むことになった。

 次に同氏は、CRT前後の心エコー所見を提示し、「心室内伝導遅延のために、まず心室中隔が動き、遅れて側壁が動くというズレがあったが、CRTで同期させることで効率的に血液を拍出できるようになった症例だ」と説明を加えた。

 しかし、このような成功例ばかりではなく、これまでの諸家の報告ではCRTレスポンダー率は60~70%に留まっているという。CRTを行っても同期改善が認められないというノンレスポンダーの原因として同氏は、術前にどの症例でCRTがうまくいき、どの症例でうまくいかないかの評価が困難であることをまず挙げる。「これまで行われていた心エコーにおける非同期所見からの予測は難しい。QRS波形が150ms以上と広く左脚ブロックがあれば、ほぼレスポンダーだと考えられるが、こうした例は少ないのが現状だ」という。
もう1つ、ノンレスポンダーの原因として同氏は、リードを留置する冠静脈洞の解剖学的要因を挙げる。これらの要因としては、適切な留置血管がない、血管の屈曲・蛇行など、留置した電極離脱の可能性、横隔神経刺激の発生(リードに隣接している横隔膜の痙攣、頻度;37%)、閾値の上昇(10~20%)などがある。「リードを留置する血管は非常に細くて、ターゲットとする場所にはアクセスが非常に難しかったり、良い場所に到達しても閾値が高くてやり直したりすることもある」(林氏)。

 しかし、解剖学的要因に関しては、冠静脈リードの改良や工夫で克服可能かもしれない、と同氏は話す。冠静脈リードは血管選択性や安定性を獲得すべく開発が進められてきたが、これまで使われていた2極リードはその一点でしかペーシングできないので、閾値上昇、横隔神経刺激への対応不可能といった問題があった。しかし現在では、4極リードが登場し主流となり、4つの電極からペーシング部位を自由に選択できるようになった。その結果、閾値上昇や横隔神経刺激時に対応可能となり、CRTノンレスポンダーへの対応ができるようになったという。

 CRTに対する左室リード挿入の第一選択は冠静脈洞だが、冠静脈洞リードの留置が本当に困難な場合は、心外膜ペーシングによる外科的(開胸)アプローチ、あるいは左室心内膜ペーシング(経中隔アプローチなど)による経皮的アプローチという方法も残されているという。但し、左室心内膜ペーシングでは永久的な抗凝固療法が必須となる。

デバイス治療の進歩と展望

 最後にデバイス治療の進歩に関連した話題として林氏は、各種デバイスの条件付きMRI対応と遠隔モニタリングシステムを取り上げた。現在ではほぼすべてのデバイスが条件付きMRI対応であり、かつ遠隔モニタリングシステムを備えているという。

 同氏によればMRI対応デバイスには、MRIがデバイスに及ぼすリスク(意図しない心刺激、オーバーセンシング、キャンセルパルスによるキャプチャーロス ※6、組織の熱傷、ペースメーカリセット、静磁場の影響 ※7など)を回避する工夫がなされており、リードも特殊フイルターを使うことで、MRI装置の影響による発熱を防止している。

 同氏は、MRI対応デバイスとリード使用時における、MRI検査オーダー時からMRI検査時そしてMRI検査後までの実施手順も紹介した(図3)。同氏は特に、最近では1.5ステラから3ステラ対応も登場し、頭などのPartialだけでなくFull bodyスキャンも可能になっていることに注目している。

図3 MRI対応デバイスとリード(使用時におけるMRI検査の実施手順)

図3 MRI対応デバイスとリード(使用時におけるMRI検査の実施手順)

 遠隔モニタリングシステムに関して同氏は、注意喚起通知(アラート)機能の有用性を強調する。このアラート機能には、設定された送信日だけでなく、植込み機器が注意喚起事項を認識すると、即座に植込み機器のデータを読み取り、送信する通知機能が付いているという。「遠隔モニタリングシステムは、患者さんのもとからアラームが届くと病院スタッフがそれに対応して早期に治療介入することができる素晴らしいシステムと言える」(林氏)。

まとめ

 林氏は講演を表のようにまとめた。

  1. PM
    小型化、軽量化、長寿命化
    →生理的ペーシング、リードの改良、リードレス
  2. ICD
    小型化、高出力化、長寿命化
    →胸部植込み、ショック低減、DF-4リード、S-ICD、WCD
  3. CRT
    リードの安定性、血管選択性、ノンレスポンダーへの対応
    →リードの改良、4極リード、左室心内膜アプローチ
  4. MRI対応と遠隔モニタリング

表 まとめ
╶╴デバイス治療の飛躍的な進歩╶╴

PM: ペースメーカ
ICD: 植込み型除細動器
CRT:心臓再同期療法

 討論の場で不整脈専門医の多忙さについてコメントを求められた林氏は、「患者さんに対するデバイスの説明や植込み後のフォロー、心房細動で抗凝固療法を行っている患者さんの管理など、確かに患者さんと一緒に行わなければならない仕事は多い。デバイス植込み数が年々増え、受診する患者さんも多い中、効率のよい診療のためには、先程紹介した遠隔モニタリングシステムをいかに活用するかも重要だ。ただ、遠隔モニタリングシステムの十分な活用のための専属スタッフがなかなか確保できないという問題が残っている」と述べた。

 欧米でのデバイス植込みの現状をめぐる質問に対して林氏は、ロンドン留学(王立聖バーソロミュー病院)の体験から、「イギリスを含む欧州では、新しいデバイスやリードが開発されると、その有用性を検証するために多くの臨床研究(治験)が行われている。しかし、実臨床の場においては医療経済的な理由から、患者の疾患に適したデバイスの中で最も安価なものを選択する傾向にある」と説明した。しかし、植込み型心電計(詳細は本シリーズの草野研吾氏の講演を参照)に関しては、「より早期に確実な診断が期待できるため、原因不明の失神例などには日本よりも積極的に植込んでいるとの印象を持った。植込み型心電計は小型化され1㎝ほどの切開で済み、診断が付いたらすぐに取り出すことができ、遠隔モニタリングで管理が可能」と付け加えた。

  • ※1:
    2016年度の植込み数は、ペースメーカ58,693台、ICD6,367台、CRT-P1,188台、CRT-D3,534例(日本不整脈デバイス工業会:JADIAのホームページより) (2017年10月閲覧)
    http://www.jadia.or.jp/medical/crt-p.html
  • ※2:
    ペースメーカの機能は、アルファベットの組み合わせで表現される。1文字目はペーシング部位、2文字目は自己の電気活動のセンシング(感知)部位、3文字目はペースメーカの作動様式を示す。1文字目と2文字目の[ V ]は心室(ventricular)、[ D ]は心房と心室の両方(dual chamber)を指し、3文字目の[ I ]はセンシングが生じた際のペーシングの抑制(inhibits pacing)、[ D ]はinhibits pacingとtriggers pacing(センシングに同期して心房あるいは心室をペーシング)の両方行うことを意味する。
  • ※3:
    洞不全症候群では、機能不全が生じている洞結節を右房から刺激するだけで済む。房室伝導障害では、洞結節からの刺激がそれ以降の経路に十分に伝わっていないので、洞結節の刺激を右房で感知して右室をペ―シングすることになるが、軽度の房室伝導障害では、必ずしもこうした右室ペーシングを必要としない。
  • ※4:
    図1をめぐって林氏に追加説明をしていただいた。
    「ATP無効時のVTに対するカルディオバージョンは、QRSに同期させてVF除細動時よりは低いエネルギー(ジュール)でショック放電が入る。QRSに同期させる理由は、非同期の場合に生じる危険性があるT波のタイミングでのショック放電(shock on T)によるVF誘発を防止することである。また低ジュールを用いるのは、意識下での高ジュールショックによる患者への疼痛(苦痛)を軽減させるためである」(林氏)。
    【追記】
    林氏によれば、「VTがVFゾーン設定値に入った場合は、非同期の電気的ショック(電気的除細動)がかかる」という
  • ※5:
    循環器病の診断と診療に関するガイドライン(2010年度合同研究班報告)
    「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」(2017年10月閲覧)
    http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf
  • ※6:
    磁場の影響で発生したリード電流によって生じるペーシング不全
  • ※7:
    静磁場はMRI検査で使用される3つの磁場の1つで、時間変化しない強力な磁場。静磁場による影響(植込みデバイスの位置が動くなど)が懸念される

Part Ⅰ 虚血性心疾患

Part Ⅱ 心不全

Part Ⅲ 肺高血圧症

Part Ⅳ 不整脈

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