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循環器病治療の最新情報2016

Part Ⅳ 不整脈
進化する不整脈診療 -話題の植込み型デバイスをめぐって-

講演内容

 最初に草野氏は、近年の不整脈領域において特に注目すべき点として、カテーテルアブレーションの進歩、デバイス治療の進歩、遺伝性不整脈疾患への理解、の3つを挙げた。講演ではこれらの中からいくつかの話題を取り上げ、それらに関連する臨床現場における注意点なども話したいと述べた。

普及が加速する条件付きMRI対応デバイス

 植込み型デバイスのうちペースメーカは、2012年にメドトロニックが初めての条件付きMRI対応ペースメーカを発売したが、その後、各社から条件付きMRI対応ペースメーカの発売が続いた。現在では植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator: ICD)、両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(cardiac resynchronization therapy defibrillator: CRT-D)、心臓再同期療法ペースメーカ(cardiac resynchronization therapy pacemaker: CRT-P)に関しても、各社から条件付きMRI対応のものが発売されているという。草野氏によればこれらMRI対応デバイスは設定がメーカーごとに少しずつ違っている。“条件付き”というのは、「認定施設が決まっている、本体だけでなくリードも含んだ条件である、機種によって全身撮影できないものがある」といったことなどを意味しているという。さらに同氏は、MRI撮像前後で設定を操作する必要があることも重要な点として挙げた。

日本医学放射線学会(JRS)、日本磁気共鳴学会(JSMRM)、日本不整脈心電学会(JHRS)は3学会合同で、「植込みデバイス患者のMRI検査に関する注意」を出したが(2016年9月23日付け)、そこには「MRI非対応デバイス装着患者に対してMRI検査が計画され、実施されかけたという報告が増加しています」とあり、自分の施設が施設基準を満たしているかを確認すること、不適切なMRI検査を行うことのないよう十分注意すること、などが呼びかけられている ※1

草野氏は、「デバイスが植込まれている患者さんに対しても、MRI検査を受ける際のこうした留意点を伝えて、不適切なMRI検査を受けるべきではないことを理解してもらう必要がある」と話す。

 MRI撮像認定施設は、各メーカーのホームページに一覧が掲載されている。「認定施設が決まっているということは重要である」(草野氏) ※2

国立循環器病研究センターではJRS、JSMRM、JHRSの3学会合同で作成された「MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査実施条件」 ※3を基に検査マニュアル を作り、これにのっとってMRI検査を実施しているという。「マニュアルには、撮像の前に必ず、MRI設定をプログラムし(循環器医師、BLS ※4修得者それぞれ1名の立ち会いが必要)、撮像後にはその設定を解除する(デバイス管理医によるペーシング閾値と各数値の確認)、ことなども記載されている。「こうした配慮が必要なので、現場の負担はかなり大きいものがある」と草野氏は話す。 

 最近では、 通常設定が自動的にMRI設定に切り替わり、撮像が終わるとまた通常設定に自動的に切り替わる機能(MRI AutoDetect:日本人医師の声を反映して実現)を持ったMRIも開発されているが、「こういう機能を持ったMRIでも、撮影後にはやはり設定内容そのもののチェックが必要なので、完全な自動化にはなっていない」(草野氏)。

着用型自動除細動器(WCD)の特徴と課題

 続いて草野氏は、心臓突然死(SCD)予防のためのデバイスに話しを進めた。SCDのうちでも急性心筋梗塞後のハイリスクのサブグループ(左心機能低下+無症候の非持続性心室頻拍があり心臓電気生理検査にて薬剤で抑制できない持続性心室頻拍や心室細動誘発例、左心機能低下例のみなど)、心室細動・心室頻拍による心停止の生存者、左室駆出率35%未満または心不全例には、これまでのエビデンスに基づいてICDが使用される(Myerburg RJ et al.Cardiovasc Res 2001)。一方、一般成人や複数のリスクを有する患者の心停止時には自動体外式除細動器(automated external defibrillator: AED)の有用性が証明され使われている。植込み型除細動器とAEDの間を埋めるものとしては、冠イベント既往例に対する着用型自動除細動器(wearable cardioverter defibrillator: WCD)が登場している。

 このうちWCDは電極を装備したベスト型の着衣である(図1) ※5
草野氏によると、WCDは次のような特徴を持つ。

  1. ①4点の電極で心電図をモニターし心室頻拍/心室細動を認識
  2. ②電気ショック直前に導電性ジェルが放出される
  3. ③連続で最大5回の電気ショック(最大150J)
  4. ④意識があるときは患者自身でショック回避ボタンを押すことで不適切なショックを防止
  5. ⑤遠隔モニタリング可能
  6. ⑥ベストのサイズは5種類(胸囲66cm~142cmの範囲であること)。

図1 着用型自動除細動器(WCD:販売名は着用型自動除細動器LifeVest)

図1 着用型自動除細動器(WCD:販売名は着用型自動除細動器LifeVest)
写真提供:旭化成ゾールメディカル株式会社

 WCD(販売名:着用型自動除細動器LifeVest)の使用にあたっては、使用施設と販売元(旭化成ゾールメディカル)とのリース契約が必要となる。「ICDとの大きな違いは、不適切作動の防止のため徹底した患者指導が必要なことだ。現時点では、リース契約で上限3カ月しか使用できないのがWCDの1つの問題点だ。大きな普及の妨げになっているのは費用の問題もある」と草野氏はいう。WCDの着用にかかるレンタル費用は415,000円/月。保険適応となっているので315,100円が償還される。レンタル費用から保険による償還額に指導管理料(3,600円)を加えたものを引いた額が病院負担となる。つまり415,000円-(315,100円+3,600円)=96,300円/月(病院負担)。「日本不整脈心電学会としても、費用がマイナスにならなくて済むような努力も必要だと思う」(草野氏)。

 3カ月だけの使用といっても、WCDのメリットの大きい症例もある。そうした症例として同氏は次のようなものを挙げる。

  1. ①感染でICD抜去後症例の再植込みまでの期間
  2. ②急性心筋梗塞発症後の低心機能患者でICD適応が将来見込まれる患者
  3. ③心移植待機例
  4. ④遺伝性不整脈疑いで遺伝子検査中の患者
  5. ⑤低心機能の拡張型心筋症患者の初期治療

など。

患者によってはメリット大の完全皮下植込み型除細動器(S-ICD) システム

 心臓植込み型電気的デバイス(Cardiac Implantable Electronic Devices: CIEDs)が進歩するにつれ、関連した感染(デバイス本体、リード=先端に電極が付いた導線)が増加傾向にある(Greenspon AJ et al. J Am Coll Cardiol 2011)。「臨床現場でもCIEDs感染が大変問題になっている」と草野氏は言う。

 さらには術後、時間が経過するにつれ移動・断線・被覆損傷などのリードトラブルが生じることがある。国立循環器病研究センターの後ろ向き研究では、ICDを植え込んだ特発性心室細動患者120例(平均年齢46.6歳、145経静脈リード)において、平均102カ月のフォローで10例(8%)にリードトラブルが発生した。リードトラブルは経年的に増加し、10年で14.2%に達した(Kamakura T et al. Circ Arrhythm Electrophysiol 2015)。同氏によれば、損傷したリードはそのまま体内に遺残させるか、または抜去する。遺残させた場合は、追加リードの留置が必要だが、追加できる本数には限度がある。抜去する場合は、リードと血管との癒着が激しく、レーザーによる抜去などの侵襲的治療を必要とし、極めて重篤な合併症リスクを伴う。複数のリードを入れている患者も多く、「植込まれたリード線を一生使えるというわけではない」(草野氏)。

 こうした問題を解決するために開発されたのが完全皮下植込み型除細動器(subcutaneous implantable cardioverter defibrillator: S-ICD)である ※6。S-ICDシステムは、従来のICDシステムのような経静脈的な心臓内へのリード留置を必要とせず、胸骨左縁の皮下にリードを植え込むことで心電図を監視し、頻拍を感知すると左の腋窩に植込まれたICD本体(パルスジェネレーター)とリードの電極との間に通電し電気ショックを与える(図2)。

図2 完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)システム

図2 完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)システム
写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社

 同氏によると従来の経静脈ICDシステムと比べてS-ICDシステムは、

  1. ①血管損傷など、血管関連の合併症のリスクは極めて低い
  2. ②全身感染のリスクが極めて低い
  3. ③植込みにX線透視が必須ではない、などの特徴がある

しかし、S-ICDシステムの場合、ペーシング機能としては心室細動に対するショック後のペーシングのみであり、経静脈ICDシステムの持っていた徐脈ペーシングや抗頻拍ペーシングの機能を持っていないので、症候性徐脈や心室頻拍患者は適応とはならない。つまり、「S-ICDは、心室細動による心臓突然死のリスクが高い患者を対象に、主に一次予防の目的で使われる」(草野氏)。

 我が国では、現在、第二世代S-ICDが使用可能となっている(図3)。「第二世代S-ICDの重量は130g、容量59.3cm3とかなりコンパクトになっているが、まだ少し大きいとの印象を持つ」(草野氏)。

図3 MRI撮像に対応した第二世代S-ICD(EMBLEM™ MRI S-ICDシステム)

図3 MRI撮像に対応した第二世代S-ICD(EMBLEM™ MRI S-ICDシステム)
写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社

 S-ICDシステムの適応を検討すべき症例としては、若年者、一次予防、血管アクセス不良、感染症の既往、感染リスクの高い例(機械弁・糖尿病・腎機能不全)などが挙げられる(McLeod CJ et al. Eur Heart J 2017)。草野氏によれば、これらの中でも特に感染リスクが高い例はS-ICDシステムの良い適応であり、末期腎不全症例ではICD留置に際して感染・出血のリスクが高いが(Tompkins C et al. J Cardiovasc Electrophysiol 2011)、 透析例にS-ICDシステムを使うことで、デバイス関連や血流感染症の合併症なしに心室頻拍/心室細動に対して適切作動が得られたと報告されている(Koman E et al. J interv Card Electrophysiol 2016)。
 同氏は、若年者もS-ICDシステムの良い適応であるとし、10歳の男児(肥大型心筋症)などの小さな体に同システムを植込むことに成功したとの報告(McLeod KA et al. Pacing Clin Electrophysiol 2012)も紹介した。

 同氏によれば、S-ICDシステムを使い始めた初期には、T波の二重感知によるオーバーセンシング(誤認識)が原因の不適切作動が問題になっていたが、最近の報告では、プログラミング戦略と術者の経験増加によって発生率が下がっている(Burke MC et al. J Am Coll Cardiol 2015)。

リードレスペースメーカが臨床の場に登場

 次に草野氏は、リードレスペースメーカを取り上げた。同氏によればリードレスペースメーカのアイデアは約半世紀前からあったが(Spickler JW et al. J Electrocardiol 1970)、臨床に使われるリードレスペースメーカはなかなか実現しなかった。しかし開発が進み、欧州ではセント・ジュード・メディカル(現・アボット)製リードレスペースメーカ(販売名Nanostim™)が最初にCEマーク ※7を取得し、メドトロニック製リードレスペースメーカ(販売名:Micra™ Transcatheter Pacing System)が続いてCEマークを取得した ※8

 同氏は、リードレスペースメーカの潜在的ベネフィットとして次のような点を挙げる。

  1. ①合併症(デバイスポケット関連合併症、リード関連合併症、鎖骨下静脈アクセス関連合併症)の低減
  2. ②効率性の向上(手技時間の短縮、術者と患者における被曝量の低減)
  3. ③患者満足度の向上(ポケット不要による美容的意義、低侵襲手技、疼痛・不快感の軽減)

 Micra™ Transcatheter Pacing System(以下、マイクラ)は、大腿静脈からの経皮的アクセスにより右心室に留置され、リードを介さず先端の電極から電気刺激によってペーシングする。同氏によれば、右室心尖部の心内膜に固定するため、マイクラの先端にはニチノール(形状記憶合金)でできたタインと呼ばれる4つのフックが付いている(図4)。また Nanostim™(本邦未承認)は先端にスクリューが付いていて、ねじ込み式になっている。

 資料として参照した日本メドトロニックのニュースリリース(2017年2月16日付け:我が国でも薬事承認を取得したことが報告されている)によるとマイクラは、従来品と同じ機能で重さ1.75g、1ccにまで小型軽量化されている。「マイクラは小型ペーシング技術を利用し、本体を皮下に植え込むのではなく、カテーテルを用いて心臓内に送り込み、直接心室に留置できます」と説明している。また、従来のペースメーカは、「外科手術で皮下ポケットを設けて装置を植え込み、静脈を通して、リードを心臓内に留置する必要があります」とも説明している。

図4 リードレスペースメーカ

図4 リードレスペースメーカ
Micra™ Transcatheter Pacing System
(Micra™ TPS:販売名はMicra経カテーテルペーシングシステム、条件付きMRI対応)
写真提供:日本メドトロニック株式会社

 マイクラを使った臨床試験Micra TPS(Transcatheter Pacing System)では、植込み成功率99.2%、植込み6か月時点での重篤合併症(心穿孔・心嚢液貯留など)4.0%との成績が得られている(Reynolds D et al. N Engl J Med 2016)。なお同試験は19カ国(日本も参加)、56施設、725例を対象に行われ、メドトロニックがこれまでに実施したペースメーカ臨床試験6件(2,667例:経静脈ペースメーカ)をヒストリカルコントロールに設定して成績を比較しているが、マイクラの重篤合併症4.0%という数字はヒストリカルコントロールの7.4%と比べて有意に低かった(ハザード比0.49)。
 一方、Nanostim™を使った臨床試験LEADLESSⅡ(3か国、56施設、526例)でも、植込み成功率95.8%、植込み6か月時点での重篤合併症6.5%とやはり良好な成績が得られている(Reddy VY et al. N Engl J Med 2015)。
 Micra TPSとLEADLESSⅡの両試験について草野氏は、「有効性と安全性は共通していた。植込み成功率は95%超で、有効性の一次評価項目であるペーシング、センシング閾値も93%超の症例で達成された。安全性の一次評価項目である植込み6か月時点での重篤な非合併症も93%超で達成された」とまとめた ※9

 さらに同氏は、電池予測寿命がマイクラでは12.5年と長いことにも注目する。「従来は、リードから外に電気が逃げていかにロスされていたかを示すデータだ」(草野氏)。

 このように注目すべき点が多いリードレスペースメーカだが、現時点での適応はシングルチャンバー型ペースメーカ(VVIモード:心室の刺激の有無だけ感知して対処)を必要とする患者(徐脈性心房細動など)に限定される。しかし草野氏は、「今後はより広い適応を持つダブルチャンバー型ペースメーカ(DDDモード:心房と心室の両方の刺激の有無を感知して対処)が登場してくる」とみており、「さらにはCRT(心臓再同期療法)がリードレスとなり、やがてリードレスとなったS-ICDと組み合わせることで、完全リードレスのCRT-Dも登場する可能性がある」と今後の展開を予測している。

左心耳閉鎖デバイスに期待

 次に草野氏は、左心耳閉鎖デバイス(WATCHMAN™、開発したAtritech社はボストン・サイエンティフィックと合併、日本未承認)を紹介した。同デバイスは、非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における心原性脳塞栓症予防を目的に、心房内血栓の好発部位となる左心耳を閉鎖するというもの。「植込まれたデバイスによって左心耳が閉鎖され、血栓ができても左心耳から外に飛ばなくなる。また植込み後、時間が経過すると左心耳内への血流遮断により血栓が形成されなくなる」(草野氏)。

 同デバイスは、大腿静脈から経カテーテル的に心房中隔を穿刺し、左心耳まで到達したところで開いて使用する。

 WATCHMAN™(第一世代)は既に2005年3月に欧州でCEマークを取得しており、続く新しいWATCHMAN™は2015年11月にCEマークを取得している。米国では第一世代のWATCHMAN™が2015年3月に米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた ※10

 NVAF患者(75歳以上、高血圧、心不全、糖尿病、脳卒中・一過性脳虚血発作・全身性血栓塞栓症既往のうち1つ以上のリスクあり)を対象とした臨床試験PROTECT AF(707例、2年間の追跡完了469例)において、有効性の一次評価項目(脳卒中+全身性塞栓症+心血管死)でWATCHMAN™群のワルファリン群に対する非劣性が証明された。しかし安全性の一次評価項目(手技による合併症+大出血)はWATCHMAN™群でワルファリン群より多い傾向であった(5.5%/年vs 3.6%/年、有意差はなし)。同試験ではWATCHMAN™植込み後、ワルファリンを45日間投与し、45日目の経食道心エコーにてWATCHMAN™の安定性や血液のもれ、血栓などを確かめた上で満足がいく状態ならばワルファリンを中止し、クロピドグレルとアスピリンを6か月間投与、その後アスピリン単独の継続投与となっている(Reddy VY et al. Circulation 2013)。

 PROTECT AFに続いて行われたNVAF患者(後述のCHADS2スコア≧2、あるいはスコア≧1+以下のリスク因子のうちいずれかを持つハイリスク例:女性で≧75歳、駆出率≧30%で<35%、65~74歳で糖尿病あるいは冠動脈疾患あり、≧65歳でうっ血性心不全あり)を対象とした臨床試験PREVAIL(407例)では、有効性の一次評価項目である複合エンドポイント(出血性または虚血性脳卒中+全身性塞栓症+心血管死/原因不明の死亡)の発生率に関してWATCHMAN™群のワルファリン群に対する非劣性は達成できなかったが、両群のイベント発生率は同じように低かった(もう1つのやはり事前に設定した有効性の一次評価項目である無作為化7日目以内を除外した虚血性脳卒中+ 全身性塞栓症は非劣性を達成)。安全性の一次評価項目の検討では事前に設定した安全目標値を下回り、WATCHMAN™群の安全性も確認された。植込み手技自体の安全性も、PROTECT AFに比べて有意に改善していた(Holmes DR et al. J Am Coll Cardiol 2014)。

 PROTECT AFを平均3.8年とさらに追跡した成績では、有効性の一次評価項目で非劣性に加えて優越性もWATCHMAN™群で達成された(Reddy VY et al. JAMA 2014)。

 ワルファリン禁忌NVAF患者(出血疾患既往や出血傾向などによる)を対象とした臨床試験ASAP(NVAF150例)でも、WATCHMAN™は術後のワルファリン非使用でも安全に植込めることが示されている。同試験ではWATCHMAN™植込み後、ワルファリンの代わりにチエノピリジン系薬剤(クロピドグレルまたはチクロピジン)とアスピリンを併用した。前2剤は6カ月間投与、アスピリンは生涯投与とした(Reddy VY et al. J Am Coll Cardiol 2013) ※11

 草野氏によれば、当初予定されていたWATCHMAN™を使った日米同時治験のかわりに、WATCHMAN™を使った日本人での安全性に関する治験が進行中であり(40例の予定) ※12、適応患者はCHADS2またはCHA2DS2-VAScスコア ※13が2点以上の心房細動で、ワルファリンが内服でき、WATCHMAN™が必要と医師が判断した患者。プロトコールは手技前日から抗血小板薬を服用、手技当日から45日間は抗血小板薬に加えてワルファリンを服用、手技当日から3カ月間は抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)、3カ月以後はアスピリン単独の終生服用。
「WATCHMAN™では、ワルファリンは一時的な内服で済む。高齢の心房細動患者で脳出血ハイリスク例がWATCHMAN™の治験の対象に選ばれるのではないか」と同氏はみている。

潜因性脳梗塞患者の心房細動検出に植込み型心電計

 次に草野氏は、植込み型心電計(Loop Recorder)について紹介した。植込み型心電計は、胸部皮下に設置することで、心臓突然死の前兆の失神や不整脈の検出に有効である。植込み型心電計は、患者がデバイスを起動した時(失神後の覚醒時点)や自動的に不整脈が検出された場合に、皮下心電図を記録する。我が国で2016年9月に販売になったReveal LINQ™(以下、リビールリンク)は、従来型(Reveal® XT)と比べて小型になり(体積比87%)、外来でも植込みが可能だという(図5)。

 草野氏によるとリビールリンクは既に欧州で、

  1. ①臨床症状を有する患者または不整脈の発生リスクが高い患者
  2. ②不整脈を示唆すると考えられる一過性症状が発生した患者(米国では①に加え、めまい・動悸・失神および不整脈を示唆すると考えられる胸痛などの一過性症状が発生した患者)

に使われていた。

 我が国でも従来型(Reveal® XT)は「原因が特定できない失神患者」に適応が認められていたが ※14、リビールリンクの販売に伴い「心房細動を検出するための潜因性脳梗塞患者」も新たに適応になった。潜因性脳梗塞というのは、アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞・心原性脳塞栓症以外の原因が特定できない脳梗塞で、その多くは潜在性心房細動に由来すると考えられている ※15。「我が国では潜因性脳梗塞患者が4~5万人存在するとされており、新しいLoop Recorderによって心房細動と診断が付く患者が今後増えるかもしれない」(草野氏)。

 資料として参照した日本メドトロニックのニュースリリリース(2016年9月5日付け)によれば、リビールリンクは、最長3年間の持続的な心電図モニタリングが可能(条件付MRI対応)。自動的に記録した不整脈を自動的に医師に送信することもできる。なお、同ニュースリリースではReveal LINQ™を「低侵襲の植込み型心臓モニタ」と呼んでいる。

図5 Reveal LINQ™(販売名:メドトロニックReveal LINQ)

図5 Reveal LINQ™(販売名:メドトロニックReveal LINQ)
「心房細動を検出するための潜因性脳梗塞患者」の適応も新たに取得
写真提供:日本メドトロニック株式会社

遠隔モニタリングシステム(ホームモニタリング)をめぐって

 草野氏によれば、国立循環器病研究センターでは2010年4月から「ホームモニタリング外来」を開設した。これは患者が装着した機器から得られた自宅からの情報を専用サーバーに送信し、それを医療側が読み取り、患者にすぐにフィードバックするという遠隔モニタリングシステムを駆使した外来 ※16。これによって「医療機関での早期診断が可能になった」という。

 同センターのホームモニタリングは、当初は患者サービスとして始まったという。しかし、海外で実施されたIN-TIME試験(オーストラリア・欧州・イスラエルの36センター、ICDとCRT-Dが植込まれた664例、追跡期間1年)において、標準ケア+植込みデバイスに基づく遠隔モニタリングシステム群は標準ケア単独群と比べて、慢性心不全患者(NYHAⅡ~Ⅲ度、左室駆出率≦35%)の予後を有意に改善するとの成績が得られたことから(Hindricks G et al. Lancet 2014)、「今や遠隔モニタリングシステムを導入しなくてはいけない時代になりつつある」(草野氏)。

 しかし、遠隔モニタリングシステム(ホームモニタリング)の実施には多くの仕事が必要になる。医師は

  1. ①患者への説明と同意書取得
  2. ②送信データに対する対応

が必要になる。専任看護師を置いて

  1. ①患者への送信機の説明
  2. ②患者のWeb登録と送信機発注
  3. ③送信データの処理(PDF化とプリント・所見解析・電子カルテ取り込み)と外来準備、対応
  4. ④次回送信予定のWeb登録
  5. ⑤患者への電話介入

などもしなくてはならない。

 現在、国立循環器病研究センターでは専属のデバイスナースが遠隔モニタリングシステム(ホームモニタリング)の中心となり、データ整理・電子カルテ取り込み・次回送信予定のWeb登録などはクラークが行い、臨床工学士や臨床検査技師の協力も得るといった体制を整えているという(図6)。「こうした体制が確立されなければ、多くの患者さんにホームモニタリングを十分に提供するのは難しいだろう」(草野氏)。現在、ICD患者約700例にホームモニタリングを導入しているが、さらにペースメーカ患者なども含めて、今後、約3,000例まで増やすことを予定しているという。

図6 国立循環器病研究センターにおけるホームモニタリングの構図

図6 国立循環器病研究センターにおけるホームモニタリングの構図
提供:草野研吾氏
IBHRE: International Board of Heart Rhythm Examiners ※17

植込み型除細動器患者の運転免許について

 最後に草野氏は、植込み型デバイス患者の運転免許の問題を取り上げた。現在、植込み型除細動器(ICD、CRT-D)患者への運転免許は、原則、禁止となっている(運転者自身が申告する)。ただし、一定期間、除細動器の作動や意識消失発作が生じていない時は、「運転を控えるべきとはいえない」旨の診断書を医師が出し、警察に運転を許可してもらっているという。

 2014年6月の「道路交通法の改正」では、特に運転制限中の運転事故による罰則が強化され、自動車運転死傷処罰法に基づき、死亡は15年以下の懲役刑、負傷は12年以下の懲役刑となった。「原因不明の失神による事故に対する罰則が強化されたことは、非常に重要である。このことを必ず植込み型デバイス患者さんに伝えて指導して欲しい」(草野氏)。

 2015年9月からは、二次予防・一次予防・ジェネレーター交換・リード交換などごとに、運転に対する細かな制限が設けられている(その後、2017年9月1日から制限の一部が改訂になった。改訂前後の内容を表1に示す)。

表1

表1
ICD、CRT-D患者の運転免許について(H29年9月から運用) ※18
提供:草野研吾氏
○=可

まとめ

 草野氏は、講演「進化する不整脈診療」で取り上げた内容(トピックス)を表2のようにまとめた。

「進化する不整脈診療」╶╴トピックス╶╴
  • 条件付きMRI対応デバイス
  • リードレスデバイス
    • 皮下植込み型除細動器
    • リードレスペースメーカ
    • 左心耳閉鎖デバイス

その他(診断に関することなど)

  • Loop Recorder
  • 遠隔モニタリング
  • 運転免許に関すること

表2 「進化する不整脈診療」╶╴トピックス╶╴
提供:草野研吾氏

 討論の場で植込み型心電計(Loop Recorder)のメリットについて問われた草野氏は、「潜因性脳梗塞患者で心房細動が検出されれば、抗凝固療法を開始して心原性脳塞栓症の予防を行うことができる。将来的には、例えばCHADS2スコア≧3以上の脳梗塞ハイリスク例で心房細動のスクリーニングに活用するといった、一歩踏み込んだ使い方もできるのではないか」と述べた。

 植込みを行ったリードレスペースメーカの取り出し(交換)の質問に関して同氏は、「植込み後早期ならペースメーカが内皮で十分に覆われていないので、取り出すことができる。しかし10年後ではどうなのか、まだ分からない。電池交換のために取り出せなければ、その隣にもう1個、さらに留置することになる。70~80%の症例で取り出せるということならば、植込みの対象が若年化する方向に向かうかも知れない」。なお、同氏も参加した国際共同治験(本文中の臨床試験Micra TPS)の登録症例の平均年齢は75.9歳だったという。

 WATCHMANの適応に関する質問には、「ワルファリンを服用していても心原性脳塞栓症が繰り返して発症する症例、出血リスクが高くてワルファリンの服用が困難あるいは禁忌の症例は良い適応だと思う。しかし、特に高齢者の心房細動に有用性が高いとされているDOAC(Direct Oral Anti-Coagulants)とWATCHMANの間で、有効性・安全性を比較した成績はないので今後の検討が待たれる」と述べた。

☆本講演内容の製品情報、適応は2017年10月現在です。

  • ※1:
    日本医学放射線学会(JRS)、日本磁気共鳴学会(JSMRM)、日本不整脈心電学会(JHRS)
    「植込みデバイス患者のMRI検査に関する注意」より引用 http://new.jhrs.or.jp/pdf/guideline/MRI.pdf (2017年7月閲覧)
  • ※2:
    日本医学放射線学会(JRS)、日本磁気共鳴学会(JSMRM)、日本不整脈心電学会(JHRS)は3学会合同で、「MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査の施設基準」を発表している(2014年1月8日改訂)(2017年7月閲覧)
    http://new.jhrs.or.jp/pdf/guideline/com_device201401_01.pdf

    【追記】
    MRI撮像認定施設に関しては、2017年9月からは下記の「不整脈デバイス患者のMRI情報サイト」で閲覧できる(2017年9月閲覧)
    http://cieds-mri.com
  • ※3:
    日本医学放射線学会(JRS)、日本磁気共鳴学会(JSMRM)、日本不整脈心電学会(JHRS)は3学会合同で、「MRI対応植込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査実施条件」を発表している(2017年7月閲覧)
    http://www.radiology.jp/content/files/1384.pdf

    同ステートメントは、「MRI 対応 CIEDs に接続されていない遺残リードがないことの確認」などの項目もチェックリストに記載するように求めている
    CIEDs:心臓植込み型電気的デバイス
  • ※4:
    BLS:Basic Life Support(一次救命処置)
  • ※5:
    日本不整脈心電学会(JHRS)は、「WCDの臨床使用に関するステートメント」を発表している(2017年9月改訂)(2017年9月閲覧)
    http://new.jhrs.or.jp/pdf/guideline/statement201709_02.pdf
  • ※6:
    日本不整脈心電学会(JHRS)は、「完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)植込み術に関するステートメント」を発表している(2017年7月閲覧)
    http://new.jhrs.or.jp/guideline/s-icd20160122/
  • ※7:
    JETRO(日本貿易振興機構ジェトロ)のホームベージには、次のような解説がある

    CEマーキングは、EUで販売(上市)される指定の製品に基準適合マーク(CEマーク)を表示することです。CEマーキングによってその製品が分野別のEU指令や規則に定められる必須要求事項(Essential Requirements)に適合したことを示します。「CE」はフランス語の「Conformité Européenne(英語:European Conformity)」の略です。
  • ※8:
    我が国では2017年2月にMicra経カテーテルペーシングシステムが承認された
  • ※9:
    2016年10月28日付けの医師へのレターで米国セント・ジュード・メディカル(現・米国アボット)は、「バッテリー誤作動による遠隔操作(テレメトリー)とペーシング出力の喪失が報告されたため、Nanostimの植込みを休止する(pause)ことを決定した」と述べており、その理由として電池の容量低下を挙げ、「未使用のものを植込まずに、セント・ジュード・メディカルに戻す」ことを推奨している
  • ※10:
    左心耳閉鎖デバイスである「AMPLATZER™ Amulet™」(第二世代、米国セント・ジュード・メディカル、現・米国アボット)も2013年1月にCEマークを取得している(2017年8月の時点で本邦未承認。アボット ジャパン株式会社によれば、現在、我が国での治験の準備中だという)。
  • ※11:
    ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社によれば、欧州においてWATCHMAN(第一世代)は2012年8月、ワルファリン禁忌患者に対しても適応拡大された
  • ※12:
    日米同時治験について草野氏に問い合わせたところ、次のような回答を得た。
    「新型のWATCHMAN は脱落例がヨーロッパで多く発生したため、日米同時治験は中止になった。2017年4月から、我が国だけで第一世代を使用した治験が開始され、安全性のみを40例を対象にチェックしている」。
  • ※13:
    CHADS2スコア:Congestive heart failure/LV dysfunction、Hypertension、Age≧75y、Diabetes mellitus、Stroke/TIAの頭文字を取った脳梗塞発症リスクを評価するスコア。合計0~6点(Stroke/TIAが2点、それ以外は1点)。

    Gage BF et al.JAMA 2001;285:2864-2870

    CHA2DS2-VAScスコア:CHADS2スコアを更に細分化したもの。Congestive heart failure/LV dysfunction、Hypertension、Age≧75、Diabetes mellitus、Stroke/TIA/TE、Vascular disease(prior myocardial infarction、peripheral artery disease or aortic plaque)、Age 65-74y、Sex category(i.e.female gender)の頭文字を取った。合計0~9点(Age≧75とStroke/TIA/TEが2点、それ以外は1点)。

    TE:血栓塞栓症

    Camm AJ et al.Eur Heart J 2010;31:2369-2429
    Lip GY et al.Stroke 2010;41:2731-2738
  • ※14:
    我が国で販売されているセント・ジュード・メディカル(現・アボット)によるSJM Confirm™(販売名コンファーム)も「原因が特定できない失神患者」に適応がある。アボット ジャパン株式会社によると、新型のコンファームは「心房細動を検出するための潜因性脳梗塞患者」の適応も取得予定だという。
  • ※15:
    脳卒中学会は「植込み型心電図記録計の適応となり得る潜因性脳梗塞患者の診断の手引き」
    (2016年5月)を作成している(2017年7月閲覧)
    http://www.jsts.gr.jp/img/tebiki_noukousoku.pdf
  • ※16:
    患者からのデータ送信について草野氏に問い合わせたところ、「送信機が自動でデータを感知して自動送信するものと、患者が手作業でワンド(スキャナの一種)をデバイスの上に置いて送信機に読み込ませるタイプの二種類がある」という。デバイスの種類やメーカーによって異なるようだ。
  • ※17:
    「日本CDRセンター」のホームページによれば、米国のIBHRE(International Board of Heart Rhythm Examiners)検定試験は、「CDR(Cardiac Device Representatives) 認定制度」(認定機関:日本不整脈心電学会)の中心をなす認定試験である
  • ※18:
    日本不整脈心電学会(JHRS)「不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関する診断書作成と適性検査施行の合同検討委員会ステートメント」改訂のための補遺2 http://new.jhrs.or.jp/pdf/guideline/com_icd201506_30.pdf(2017年7月閲覧)

    【追記】その後、2017年8月1日付けで「不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関する診断書作成と適性検査施行の合同検討委員会ステートメント」改訂のための補遺3、が追加になった。表1は、講演で紹介した補遺2に基づく表に、今回新たに追加された補遺3の改訂内容も反映させて、草野氏が新たに作成したものである(2017年9月閲覧)。
    http://new.jhrs.or.jp/pdf/guideline/statement201708_02.pdf

Part Ⅰ 虚血性心疾患

Part Ⅱ 心不全

Part Ⅲ 肺高血圧症

Part Ⅳ 不整脈

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