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現代における大動脈弁狭窄症の病像とは
Pathophysiology of aortic stenosis in the modern era

大門 雅夫(東京大学医学部附属病院 検査部・循環器内科)
Masao Daimon [The Tokyo University Hospital, Department of Clinical Laboratory]

はじめに

大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)は、どの医学書にも載っている古くから知られた病態である。そして、その病態が進行性で症状が発現すれば予後不良であることを示すBraunwaldらの図は、あまりに有名である(図1:本誌のみ掲載)。しかしながら、古くから知られたASの病態は、現在増え続けるASの病態とは少し異なるものである。かつてASの主な原因であったリウマチ性弁膜症は時代とともに減少し、現在は高齢者における石灰化大動脈弁がASの主な原因となっている(図2、動画1~4)。石灰化ASは、動脈硬化と類似の危険因子に関連して発症するために、冠動脈疾患や左室拡張性心不全、動脈硬化症などの合併リスクが高い。加えて、高齢者では症状が不明瞭で症状だけで手術適応を決める事が難しいことや、高い手術リスクのために手術適応の決定が難しいことも多く経験するようになった。このように現代のASは弁の狭小化に加えて多くの問題を内包する。治療法としては外科的大動脈弁置換術(aortic valve replacement: AVR)に加えて、経カテーテル的大動脈弁置換術(trans-catheter aortic valve implantation: TAVI)という選択肢も増え、治療方針決定には、慎重かつ多角的な検討が必要とされている。不必要な侵襲的治療は、患者を無意味な周術期リスクにさらすだけでなく、医療経済にも大きな負担を強いることになるため避けるべきである。ここでは、現代におけるASの病像とその問題点について概説する。

大動脈弁狭窄症


本誌図2
大動脈弁通過血流速度波形

大動脈弁通過血流速度は3.88m/s、平均圧較差は35mmHgと上昇している。

動画1 左室長軸像:
左室は収縮良好だが、軽度肥大している。大動脈弁は石灰化し、可動性低下が見られる。
動画2 大動脈弁拡大:
大動脈弁の石灰化と可動性低下が明らかである。
動画3 短軸像:
大動脈弁は3尖とも石灰化し、可動性が低下している。
動画4 心尖像カラードプラ画像:
心尖部からのカラードプラ画像では、大動脈弁の通過血流速度の加速が見られる。

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  • 動画1 大動脈弁狭窄症
    左室長軸像

  • 動画2 大動脈弁狭窄症
    大動脈弁拡大

  • 動画3 大動脈弁狭窄症
    短軸像

  • 動画4 大動脈弁狭窄症
    心尖像カラードプラ画像

「心臓」特別号「弁膜症 僧帽弁狭窄と逆流」

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