日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 高血圧に関するQ >逆白衣高血圧とはどういうものですか

循環器最新情報 日本心臓財団は医療に携わる皆様に実地診療に役立つ循環器最新情報を配信しています。是非お役立てください。

診療のヒント100 メッセージはひとつだけ

高血圧 Question 10

逆白衣高血圧とはどういうものですか

診察室血圧は正常なのに診察室外で測定すると高血圧である状態を指し、仮面高血圧とも呼ばれます。診察室で測定すると高血圧なのに診察室外では正常血圧を示す白衣高血圧とは逆です。正確には複数回測定した診察室血圧の平均が140/90mmHg未満で、かつ家庭血圧計などで測定した診察室外血圧の平均が複数回135/85mmHg以上、もしくは平均24時間血圧が130/80mmHg以上の場合と定義されています。

血圧が正常といわれている方の10~15%、管理良好とされる高血圧患者さんの30%に見られると報告 (Pickering TG et al. Hypertens Res 2007, Obara T et al. Blood Press Monit 2005)されています。正常血圧の方より代謝異常を合併しやすく、通常の高血圧患者さんと同じくらい心血管イベントのリスクが高いです。

念頭におくべきは、正常高値血圧 (130-139/85-89mmHg)の方、普段血圧が高くないのに心電図や心エコーで左室肥大を呈する方、心血管イベントを起こした方、喫煙者、大酒家、精神的ストレスの多い環境にいる方、身体活動度が高い方、頻拍ぎみの方、体位で血圧が変動しやすい方、メタボリック症候群、糖尿病などが挙げられます。通常の高血圧患者さんも可能性があります。血圧が高い時間帯によって、さらに早朝高血圧、ストレス高血圧、夜間高血圧などにわけられます。

■早朝高血圧

早朝血圧だけでなく、血圧変動性の増大や夜間から早朝にかけて上昇する血圧モーニングサージも心血管イベントに関連しています。血圧モーニングサージの原因には、寒冷、加齢、精神的ストレス、飲酒、睡眠時無呼吸症候群が関与しています。治療は体温管理、節酒や良質な睡眠に加え、Ca拮抗薬や、早朝に亢進する神経・体液因子をターゲットに交感神経抑制薬やRA系阻害薬の眠前内服が合理的です。

単剤では管理が難しく、併用療法が必要になることが多いといわれています。早朝以外の過度の降圧を避けるために、数種類の降圧薬を時間をずらして投与する時間降圧治療も有用です。

■ストレス下高血圧

職場や家庭のストレスにさらされている昼間の時間帯に血圧が高くなります。治療目標は通常の高血圧と同様で、正常血圧レベルに降圧することが望まれます。高血圧の家族歴がある場合や肥満の方は、職場で血圧が上がりやすいといわれています。

■夜間高血圧

通常の家庭血圧測定では診断困難ですが、24時間血圧をモニターできるABPMによる夜間睡眠中血圧の平均が120/70mmhg以上で診断されます。機種によっては家庭血圧計でも睡眠時血圧を測定できます。夜間血圧は日中の血圧と比べて変動が少なく、心血管イベントや認知機能低下とより関連しているといわれています (Boggia J et al. Lancet 2007, Nagai M et al. J Hypertens 2008)。

睡眠障害、心不全や腎不全などの循環血液量増加、糖尿病による自律神経障害などが原因として挙げられます。対策としては、減塩を含めた水分管理、時間降圧治療などが有効です。
 

(2014年10月公開)

Only One Message

既に高血圧で治療中の患者さんであっても、このような状況がありうることを念頭において診療してみましょう。

回答:高部 智哲

キーワード検索

検索ボックスに調べたい言葉を入力し、検索ボタンをクリックすると検索結果が表示されます。

ご寄付のお願い