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高血圧 Question 8

高血圧の患者さんでST-T変化を認めます。症状はありません。心エコーを依頼したところ、左室肥大はありません。虚血性心疾患を疑って検査すべきですか

■活動度と冠危険因子による判断

毎朝仕事に行く方と、身の回りのことを介助者に手伝ってもらう方では活動度が異なります。また同じく通勤されていても、なるべく歩いて職場に向かい積極的に階段を使う方と、車通勤でエレベーターしか使わない方でも活動度は違います。

糖尿病と脂質異常症については特に指摘されていないようですが、糖尿病の有無を十分に評価したか、脂質異常については総コレステロール値のみでなくLDL-C値とHDL-C値をきちんとみているか (低HDL-C血症はないか?) 、本人申告の喫煙歴は信用できるのか、心臓発作や心臓突然死の家族歴は正確に確認できているか、などが重要です。

糖尿病の診断をHbA1cのみで行っている場合は、ヘモグロビン異常による見逃しもありえます。この場合は無症候性心筋虚血を否定できません。本来は症状があって検査すべきですが、現在は検診で一般的に心電図検査が施行されている状況です。症状がない場合、高リスク集団においては運動負荷心電図検査や遅延造影MRIによるスクリーニングが推奨されますが、これら全てに問題がなく本当に高血圧のみであれば、積極的検査はすすめられません。

心血管イベント発症のリスクについては、日本人であればNIPPON DATA 80に基づいて作成された健康危険度予測チャートを参照にすると良いと思います。人種差はありますが、欧米のFramingham risk scoreも参考になります。

■予想される病態による判断

ST変化には一次性と二次性があります。虚血性は一次性にあたり、心室内に活動電位波形の異なる領域が存在するために起こります。他には、正常亜型、早期再分極やブルガダ症候群(型心電図)、心外膜炎などが一次性にあたります。心外膜炎の原因には、感染症、膠原病、ガン細胞浸潤などがあげられます。

二次性は心室脱分極変化に起因する再分極変化によるもので、脚ブロックやWPW症候群などがこれにあたります。虚血以外の可能性についても検討する必要があります。一般的に、高電位差がありST-T変化を伴えば左室肥大で、ST-T変化がない場合は肥大ではないことが多いです。

■情報の再評価

本当にST-T変化があるのかどうかを自分で確認します。また可能な限り以前の心電図を探して比較します。エコー所見についても、もう少し詳細に評価します。例えば、重症3枝病変を示唆するかもしれない軽度の壁運動低下の有無や程度、感染や癌浸潤を示唆する心嚢水貯留の有無などを確認します。
 

(2014年10月公開)

Only One Message

情報を再評価し、リスクに応じて虚血精査の必要性について判断を。

回答:高部 智哲

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