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心不全 Question 22

β遮断薬にはどういうものがありますか

心不全治療に対し保険適応下で使用できるβ遮断薬は現在2種類あります。
カルベジロールとビソプロロールです。

Fonarowらは、心不全入院中にカルベジロールを使用した群がβ遮断薬を使用しなかった群より退院後の予後が良かったと報告しています。退院後の90日間総死亡率はカルベジロール群8%、β遮断薬非投与群16%でした(Fonarow GC, et al. Am Heart J 2007; 153: 82.e1-82.e11)。

2002年に本邦で初めて慢性心不全に対する保険適用を取得したのがカルベジロールです。それまでむしろ禁忌といわれたβ遮断薬が生命予後改善薬として再認識されたのです。

またThe cardiac insufficiency bisoprolol study II(CIBIS-II)ではプラセボ群と比較しビソプロロール群で総死亡リスクが34%有意に低下したことが報告されています()。

図 プラセボ群と比較しビソプロロール群で予後改善効果が示された生存曲線.
対象はNYHAIII-IV, LVEF≦35%の慢性心不全患者2647例。ビソプロロールは1.25mg/日より開始され忍容性に問題なければ2.5mg, 3.75mg, 5mg, 10mg/日へ増量されました。ビソプロロール群、プラセボ群それぞれ推定年間死亡率は8.8%、13.2%であり、プラセボ群と比較したビソプロロール群における総死亡リスク低下率は34%でした。

(CIBIS-II Investigators and Committees: Lancet 1999, 353: 9-13)
池ノ内CIBIS.jpg


β遮断薬の分類について簡易的ながら(Prichard BNC: Br. J. Clin. Pharmac. 5: 379-399,1978より)を示します。内因性交感神経刺激(intrinsic sympathetic activity: ISA)とは交感神経興奮時にはβ遮断作用を呈しますが、非興奮時にはβ刺激作用をもつことを意味し徐脈を起こしにくい特徴があります。膜安定化作用(membrane stabilizing activity: MSA)は膜を安定化し、高用量で活動電位の立ち上がりを抑制することであります。実際の臨床ではその重要性は希少です。患者さんごとの重症度にもよりますが、β1選択性が高いII類薬は気管支喘息、冠攣縮性狭心症の患者でも使用可能です(慎重投与)。

表 代表的β遮断薬の分類
蜂谷表.jpg

(2014年10月公開)

Only One Message

血圧が低めの心不全患者にどう使うか・・・重度低心機能例には少量カルベジロール、心拍数が80を超える症例にはビソプロロールが向いていると考える。

回答:蜂谷 仁

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