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心不全 Question 7

BNPをどのように測定し、日常診療でどう活かせばいいでしょうか

BNPは大変に有用な心不全の診断手段ですが、いくつかの気をつける点があります。

日本循環器学会の急性心不全治療ガイドラインでは “肺うっ血が明らかな急性心不全ではほとんどの患者で血漿BNP値が100pg/mL以上に上昇し、診断に利用できる。また、BNP(NT-Pro BNP)値は経過観察にも役立つ。収縮力が低下していない患者で急性心不全が疑われる例ではBNP(NT-Pro BNP)値が拡張性心不全の診断の糸口になる”と記載されています。

同じく、慢性心不全治療ガイドラインでは、BNPは左室拡張終期圧をよく反映し、心不全の補助診断法として特に優れているのは、(1)心不全の存在診断、(2)心不全の重症度診断、(3)心不全の予後診断である。とされています。

したがって、BNPは呼吸困難などで来院した心不全患者の臨床診断に有用で、NYHA重症度分類に平行して高値を示します。予後判定にも有用でBNPが高いほど慢性心不全患者の心事故が増加します。BNP値が10pg/mL上昇するごとに死亡率が1.2%上昇するとの報告もあります(Val-Heft, Circulation 2003, 107;1278)。肺毛細管圧とBNPは慢性心不全患者の独立した予後規定因子であったとの報告もあります(Circulation 1997, 96; 509)。

ガイドラインの中の“神経体液因子の評価”における血漿BNP濃度測定の位置付けは、“心不全の診断、重症度、予後判定”としてClass I、“治療効果判定”としてClass II a、“スクリーニング目的”ではClass II bです。

つまり、注意すべき点は、一般集団を対象にした健診におけるBNPの有用性については未だ結論が出ていないということです。BNPの有用性はその“陰性的中率”が大変に高いということです()。


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したがって、BNPが正常であれば心不全である可能性はきわめて低いと考えて良いでしょう。一方、“陽性的中率”は必ずしも高くありません。症状のない患者でルーチーンに測定したBNPが高値を示した場合、これを心不全と決めつけるには注意が必要です。

BNPの測定値は年齢や腎機能の影響をうけて高値となることがあります。この傾向は特にNT-ProBNPで著明で、NT-proBNPではさらに呼吸器疾患の影響も大きく受けます。

心房細動の症例では心不全がなくとも一定の高値を示す症例が多いことは日常の診療でよく経験します。

以上から言えることは、まずは患者の症状、心雑音、呼吸音、浮腫、酸素飽和度などの基本的な臨床指標を十分に確認して心不全の存在や重症度を判断するように努め、BNPの測定はあくまで心不全診断や予後判定の補助手段として利用するようにすることが大切です。

Only One Message

BNPはあくまで診断の補助手段として大変に有効です。健診などでのスクリーニング目的での使用は慎重に。

回答:池ノ内 浩

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