マルチスライスCTによる新たな治療戦略
マルチスライスCTの特徴としては、非侵襲的な検査であり、何度も繰り返し実施可能な点が挙げられる。また、病型も選ばないため適用範囲が広く、例えば狭心症の場合には安定型でも不安定型でも検査可能である。検査により、血管の狭窄度のみならず、プラークの危険性も判断できる。一方、問題点としては機械的な性能の限界が挙げられる。例えば、心臓は一分間に70〜80回拍動し、1回の拍動中で拡張と収縮運動を行っているが、マルチスライスCTのシャッタースピードは約4分の1秒、最速で6分の1秒であるため、撮影時には薬物で拍動を遅らせる処置が必要となる。また、解像度にも限界があり、石灰化した血管壁やステント内部の狭窄では判定が困難となる。また、循環器専門医と放射線科医師との連携不足も問題となっている。最後に佐藤氏は今後の治療戦略として「将来は、コレステロール値が高い、肥満、糖尿病、喫煙などといった心筋梗塞のリスクの高い患者に対し、スクリーニング的にマルチスライスCTを実施して、プラークの性状や狭窄度を判定することで、治療戦略を組み立てることが可能になる(図3)」と結んだ。