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一般向けメールマガジン 第101号

HEART WEB NEWS No.101

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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第101号】2014年1月15日発行(月刊)
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新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。

【目次】
 ご挨拶 矢崎義雄
TOPICS「塩は高血圧の敵~日本人はどうして塩を取りすぎるのでしょう」
 特別寄稿「わが国の受動喫煙防止法の問題点」藤原久義
 ご寄附のお願い

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【ご挨拶】 公益財団法人 日本心臓財団 理事長 矢﨑 義雄

 明けましておめでとうございます。

 この度、日本心臓財団は設立以来45回目の新しい年を迎えることになりました。
皆さまからの多大なご支援をいただき、お陰様で財団の活動を今日まで充実して実施することができました。篤く御礼申し上げます。

 新年にあたり、財団が果たすべき役割を考えてまいりました。
わが国における人口の高齢化は急速に進展して、昨年には国民の4人に1人が高齢者となる高齢化率が25%に達しました。その結果、加齢が最も大きな危険因子である、がん、動脈硬化、さらにはそれに基づく心筋梗塞、脳梗塞などの病気が国民死亡原因の70%近くを占めるようになりました。

 そこで、高齢でも健やかに暮らすには、このような病気を予防することが大切です。特に、自己管理でコントロールが可能な生活習慣の改善が重要です。

 このような状況にあって、日本心臓財団は、皆さまが健康を増進して健康寿命を延伸するための予防や病気への対応などについての適切な情報をお伝えする啓発活動を、今日まで幅広く展開してまいりました。特に、心臓病を中心とした病気に関するご質問に専門家が分かりやすくお答えする「セカンドオピニオン相談窓口」をはじめとする当財団ホームページには一日7000件を超えるアクセスがあり、多くの方々のお役に立っておりますが、今後さらに内容を充実させていきたいと思っています。

 一方、創刊46年を迎えた、循環器専門誌「心臓」には、多くの若手専門医からの症例報告が投稿されています。昨年より、全国の循環器科教室や病院の医局の皆さまが賛助会員になっていただき、さらなる発展が期待されています。

 そして、財団の学術的な活動である循環器病の予防や病因の解明、そして治療や診断法の開発に関する研究助成、若手研究者の海外留学の支援などもさらに充実し、実施していきたく存じております。

 このような活動は、全て皆さまからのご寄附があってはじめて実施が可能となります。今後ともよろしくご支援いただきますようお願い申し上げます。

 最後に、皆さまにとりまして2014年が、より良き年となりますよう心からお祈り申し上げます。

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【TOPICS】塩は高血圧の敵~日本人はどうして塩を取りすぎるのでしょう

 塩分を取りすぎると高血圧を招き、それが脳卒中や心臓病の原因になることはよく知られています。しかし一方、塩(ナトリウム)はカリウムとともに身体の中の血液などの体液量を維持するために必要なものです。
 海で生まれた生物が進化し、陸に上がったとき、海の環境を維持するために、少量のナトリウムで生きていけるよう、腎臓でナトリウムを再吸収する機能が発達しました。
 では、人間はいつから食塩を取るようになり、それが過剰になっていったのでしょう。

 弥生時代に稲作が始まるまでは、人間は狩猟により動物から塩分を摂取していました。しかし、米をはじめとする植物にはカリウムは含まれていてもナトリウムはほとんど含まれておりません。そのため、カリウムを排出し、ナトリウムを再吸収するためには、食塩による摂取が必要になったのです。

 やがて、人間は食塩を多く取るようになっていきました。こんなエピソードがあります。徳川家康が家来たちに、この世で一番うまいものは何かと尋ねたときのこと。さまざまな回答が出ましたが、ふと側室の英勝院にも尋ねると、彼女は塩と答えたのです。それは、食べ物が美味しくなるもまずくなるも塩次第という回答でした。
 味付けだけでなく、保存にも塩は貴重でした。日本では野菜を保存して漬け物が生まれ、西洋では肉の保存に使われるようになりました。給与(サラリー)の語源は塩(ソルト)であり、古代ローマでは給与として貴重な塩が配給されていたのです。

 こうして塩分摂取が過剰になると、体内で細胞の外にあるナトリウムが増加し、細胞外液の濃度を維持するために、水分を貯留するため、血液を含む体液量が増えてしまいます。水道の蛇口(心臓)をいっぱいに開いた状態が続くと、蛇口につながるホース(血管)にかかる圧が大きくなる(高血圧)のです。

 日本人の食塩摂取の推移を見てみると、減少傾向にありますが、1980年代後半から1990年代にかけて食塩摂取量が上がっています。なぜでしょう。これは、バブル期に美味しいものをついついたくさん食べてしまったからです。

 日本の調味料(食塩、醤油、味噌)にはたくさんの塩分が含まれていますが、これらの調味料を工夫して少量にすることで食塩摂取量を減らすことができます。また、食物線維やカリウム、マグネシウム、カルシウムを多く摂取すると血圧が下がるといわれています。
 食生活に注意して、高血圧の敵である食塩を取りすぎないようにしましょう。

 三越厚生事業団常務理事:水野杏一先生のご講演より

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【特別寄稿】
 わが国の受動喫煙防止法の問題点
 --喫煙室設置に公的補助金--

       19学会禁煙推進学術ネットワーク委員長
       兵庫県立尼崎病院・県立塚口病院 院長
                    藤原 久義

 <喫煙は病気、喫煙者は患者―膨大な健康被害―>

 現在、わが国の喫煙者は男性32%、女性10%と男性喫煙者は大幅に減少してきているが、なお約2,000万人(20%)と膨大である。喫煙はニコチン依存症という病気で、禁煙保険治療が可能である。日本での喫煙による死者は約13~19万人/年、受動喫煙による死者は約6,800人/年と東日本大震災による死者約2万人と比較し、驚くべき数字である。日本人のガンを含む全死亡に占めるリスクの程度は喫煙が他のリスクよりはるかに高く一番である。循環器疾患に限って見ても高血圧についで2番目で、脂質異常症や糖尿病より高い。喫煙は高血圧症と同様に病気であるが、一般には趣味嗜好と思っている人も多く、禁煙の重要性に対する認識は不十分である。

 <わが国の受動喫煙防止法・条例の国際的に見た異常性:喫煙室設置とそのための公的補助金>

 受動喫煙による健康被害を予防するための受動喫煙防止法が我が国にもある(平成15年健康増進法第25条)。原則禁煙であるが、分煙も可として喫煙室設置のための財政上の措置を講ずる(平成22年2月22日「受動喫煙防止対策について」厚生労働省健康局長通知)とし、そのための国からの公的補助金として平成25年度の予算に7億6千万円が計上されている。
 わが国2番目(1番目は神奈川県)の兵庫県の受動喫煙防止条例(1年間の周知期間を経て、平成25年4月から施行)では、まず、第一段階としての本年は官公庁、病院、学校が対象で分煙は認めず、完全建物内禁煙(学校では敷地内禁煙)で、喫煙室の設置は不可である。この点では先行する神奈川県受動喫煙防止条例より、一歩進んでいる。来年から第2段階としていよいよ民間の不特定多数が出入りする公共的施設にも適応される。罰則も刑事罰である。
 ただし残念なことには上記3つの施設以外では分煙を認め、喫煙室設置のための補助金も計上されている。「兵庫県受動喫煙防止対策検討委員会」の最終報告書が県議会で修正された結果である。国が法律で認めている分煙を県の条例で否定することは難しい等の理由である。
 一方、世界の潮流は、わが国も含めて104カ国が承認・加盟している「WHOたばこ規制枠組み条約(FCTC) 」に記載されているように、建物内の完全禁煙で喫煙室設置を含む分煙を認めていない。わが国のように分煙を可とし、公的補助金を認める受動喫煙防止法は条約違反で、わが国は国際的に見て異常である。

 <なぜ、喫煙室設置に問題があるのか?>

 喫煙室設置がおかしい理由は以下の4点である。
 1)喫煙室内の高濃度の微小粒子状物質(PM2.5)
 タバコの煙には能動喫煙者がフィルターを介して吸い込む主流煙とタバコの先から空中に排出される副流煙があるが、副流煙の方が発がん物質等の有害物質の濃度が高く、危険なことは周知の事実である。
 最近、中国の大気汚染がわが国にも影響があり、その中心がPM2.5であるとして、大きな社会問題となっている。わが国の環境省の外気でのPM2.5の基準値は35μg/m3/24時間以下と決められているが、倍の70μg/m3以上の測定結果が出ると健康に害がある可能性ありとして九州等では外出禁止令まで出すという騒ぎになっている。わが国の喫煙可能な喫茶店のPM2.5は800~200で平均400~500μg/m3と北京よりはるかに高く、かつ持続する。
 2)煙が漏れない喫煙室の設置には高額の設備費が必要
 喫煙室の中が危険なことは上記の通りであるが、高額の設備費を用いてもドアーの開け閉めに伴い外にタバコの煙は当然、拡散し、受動喫煙の防止は用意ではない。
 3)喫煙室で働かざるを得ない従業員の受動喫煙の危険性
 喫煙室の掃除や喫煙室へ食事等を運ぶ従業員は高濃度の受動喫煙を受けることになる。
 4)喫煙室で喫煙する能動喫煙者の受動喫煙の危険性
 能動喫煙者は能動喫煙と同時に受動喫煙を受けることになる。
 能動喫煙者は、喫煙室で喫煙するのではなく、外で喫煙するのが本人にとっても、他人にとっても安全である。

<喫煙室設置のための公的補助金やJTからの援助は異常!>

 すでに述べたように喫煙は依存症という病気で喫煙者は患者であり、喫煙室は危険な空間である。病人である能動喫煙者ならびにそこで勤務せざるを得ない従業員そして喫煙室の近くにいる一般人にとって、危険な部屋の設置を行政機関が公的資金を用いて推進することは異常である。
 あたかも「喫煙室ではドンドンタバコを吸ってくださいね!」と喫煙を国家が保護・奨励しているように感ずるのは私だけであろうか?
 このような考えの背後には喫煙は病気ではなく、趣味・嗜好で国民の権利という古い考えがある。さらにタバコ会社であるJTが環境にやさしい良い行為の一環と装って喫煙室設置に費用を負担することがしばしばわが国にはある。これは論外である。
                
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