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日本心臓財団刊行物

ハートニュース

心臓病と外科治療(2000年発行)

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心臓外科の進歩
企画:日本循環器学会教育研修委員会
監修:松田 暉 大坂院医学系研究科機能制御外科学教授
発行:日本心臓財団
体に負担の少ない手術の普及


 心臓外科手術を行う可能性のある疾患は、心房や心室の中仕切り(中隔)に欠損がある先天性の病気や、動脈硬化などによる虚血性心疾患(冠動脈狭窄、心筋梗塞)や心臓内の弁が何らかの機能障害を起こす心臓弁膜症など、数多くあります。
心臓外科の普及は、体の外で血液を循環させる人工心肺装置の開発、また薬で一時的に心臓を停止させる方法や、停止した心臓に極力ダメージを与えないための保護方法の確立などがあって可能となったものです。
 日本で最初に人工心肺装置を使った心臓手術が成功したのは一九五六年のことです。それから四〇余年を経た今日では、全国多数の施設で標準的な心臓外科治療が受けられるようになりました。
外科手術の中でも心臓外科は大がかりな手術であることは否定できません。外科手術全般で最近は大きな技術革新が行われ、さまざまな方法で患者さんの体の負担を軽くする低侵襲手術が行われています。これは心臓手術においてもいえることです。すなわち、低侵襲心臓手術といわれるもので、この技術により高齢者でも手術適応が増える傾向につながり、さらに、早期退院、早期社会復帰も可能となってきました。

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新しい技術のいろいろ
TMLR(レーザー心筋内血管形成術)・図解
 先天性心疾患や心臓弁膜症の外科治療では、心臓そのものを開いて行う手術になりますから、心臓を停止させる必要があり、人工心肺装置は不可欠です。人工心肺装置に関しても、最近、ポートアクセスシステムという簡易で低侵襲のシステムが開発されています。この方法は、頸部や大腿部の血管から管を挿入し、心臓の大動脈を風船で遮断し、簡便に人工心肺につないで血液循環を行うものです。この方法を用いると心房中隔欠損や心臓弁の手術も体の創を小さくでき、また心臓も大きく切り開かずに行うことができます。
 このほか虚血状態になった心筋に血流を回復させるために、レーザー光線で心筋に小さな穴を開けて新しい血管ができるように促すTMLR(レーザー心筋内血管形成術)という方法も注目を集めています。
 また、重症の心不全の治療においては、これまでの内科的治療や外科手術で対処できない場合、最終的に心臓移植を待たなければなりませんでした。しかし近年、心臓の左心室を小さくして心臓の負担を軽くする手術方法も行われるようになっています。

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人工心肺装置を使わない冠動脈バイパス術

動脈を使った冠動脈バイパス術・図解 心臓に酸素と拍動する心臓の動きを部分的に抑える器具・図解栄養を供給している冠動脈が過度に狭窄していたり、心筋梗塞を起こし、血管が詰まってしまった場合には、PTCAという、血管に細い管を入れて狭くなった部位を風船で広げる方法や、薬により血栓を溶かす方法などが行われます。これらの治療が困難な場合には、体の他の部分の血管を使って迂回路をつくり、詰まった部分を通らずに血液の流れを回復させる手術が行われます。これが冠動脈バイパス術です。この手術は一九七〇年代に導入され、現状では心臓外科でもっとも多い手術です。
 冠動脈バイパス術においても、最近になって新しい方法(MIDCAB:ミッドキャブと呼ばれています)が開発され、日本でも盛んに行われるようになっています。これは、従来行われていた人工心肺装置や心停止法を使用せず、また胸骨の切開を小さくすませる低侵襲性の手術です。心臓が拍動した状態で手術をするため、それを助ける器具類がたくさん開発されています。なお、視野の悪い心臓の裏側を走る冠動脈を手術する場合には、胸骨はある程度大きな切開になるものの、やはり人工心肺を使わない方法も開発されており、従来の方法に比べ同じ程度の質でありながら回復が早いことがわかっています。

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日本でもはじまった心臓移植
臓器提供意思表示カード・図解 1999年は、臓器移植法の制定後、それに則って初めて日本で脳死からの心臓移植が行われた年です。1999年10月現在、三例が行われ、順調な経過をたどっています。
 しかし、世界ではすでに50,000例に迫る心臓移植が行われており、欧米では年間3,500例、お隣の韓国ではすでに100例、台湾は300例を数えています。
日本では心臓移植を必要とする患者さんは年間 五〇〇人はいると考えられており、それに応えることができないのが実情です。臓器提供意思表示カードの普及と臓器提供がスムーズに行われるシステムの構築と、何よりまして社会の脳死と臓器移植への理解が深まることが、日本にこの治療法が定着するための課題となっています。
   

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