■PDFダウンロード: PDF
心不全への挑戦 | |
企画:日本循環器学会教育研修委員会 監修:篠山 重威 京都大学大学院医学研究科循環器病態学教授 発行:日本心臓財団 |
|
心不全とは | |
あらゆる循環器病がたどる終末像 | |
![]() ![]() ![]() |
心不全を心臓病の病名の一つと勘違いされている方が結構いるようですが、心不全は病名ではありません。心不全とは循環器病(心筋梗塞などの虚血性心疾患、弁膜症、心筋症など)が最終的にたどりつく一群の病態、症候群を指します。心不全は生命の危険をはらんだ循環器病の終末像といえます。 心不全の考え方は時代によって変わってきました。20年ほど前までは心臓のポンプ機能の低下による症状だけを考えていました。血液が全身にうまく回っていかないために臓器や組織に血液がたまりやすくなり、うっ血が起こって、むくみが生ずる状態を心不全といっていたのです。ですから、治療の目標は心臓のポンプ機能を改善してうっ血をなくすことであり、強心薬、利尿薬、血管拡張薬が使われていました。心不全を疲れた馬が荷を引いて坂道を登ることにたとえると、ポンプ機能を改善する強心薬は、疲れた馬にムチをあてて無理に坂を上がるようなものです。また心臓の負担を軽くする血管拡張薬は馬の引く荷を軽くするような治療です。しかし、こうした治療でポンプ機能が改善されても、患者さんの延命にはつながらないことが明らかになってきました。 今日、心不全に対する考え方は変わり、 ?根底に心機能障害があり、 ?生活の質の低下(日常の動作にも支障をきたす状態)がみられ、 ?不整脈が頻発して生命も脅かされているといった三つの状態が伴う症候群をいいます。 心機能が障害されると交感神経の活動を高めたり、レニン-アンジオテンシン系の活性が亢進するため、治療薬はそれを抑制するベータ遮断薬(馬の速度を落として心臓を休ます)やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が中心になっています。 |
▲↑TOP
心不全への移行を防ぐ |
心不全を防ぐには、いま自分にどのような循環器病があるかを正確に知り、その治療を行うことが大切です。 心筋症や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)がすでにある場合は、心不全へ移行するのを防ぐために、悪化させるような因子を避ける生活を心掛けましょう。たとえば過度な飲酒や過度な運動はしない。たばこはやめる。水分や塩分の取りすぎもいけない。毎日決まった時間に体重測定をしてチェックする、などです。また服用している薬が心臓病を悪化させる原因になることがあります。何かおかしいと思ったら素人判断をせずに、早めにかかりつけ医に相談するようにしてください。 |
▲↑TOP
究極の治療法は心臓移植 |
![]() 日本では平成9年に臓器移植法が施行された後、最初の心臓移植が平成11年2月に行われました。心不全の究極の治療法として欧米で日常行われている心臓移植を日本にも根づかせていく必要があります。 |
▲↑TOP
臓器提供意思表示カード登録のおすすめ
日本では移植を待つ患者さんと臓器提供者をつなぐ仕事を社団法人日本臓器移植ネットワーク(TEL:0120-22-0149) が行っています。
心臓移植の場合、移植を待つ患者さん10人に対して臓器提供登録者が 300万人必要といわれています。日本では臓器提供者側の数がまだまだ少ないため、移植を待ち望みながら亡くなっていく患者さんが後をたちません。臓器提供の意思のある方は家族とも話し合われ、「臓器提供意思表示カード」に必要事項を書き込み、財布の中や免許証といっしょに常時携帯してください。
「臓器提供意思表示カード」は国公立病院、保健所、市役所、郵便局、コンビニエンスストアのローソンなどに置いてあります。