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高血圧と心臓病

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高血圧と心臓病
監修: 竹下 彰先生(九州大学医学部循環器内科教授)
心臓病の危険因子・高血圧
サンレントキラー・イラスト

 高血圧は自覚症状がないため、米国では「サイレント・キラー(静かなる殺人者)」と呼ばれています。それは高血圧が突然死を起こす心臓病や脳卒中の重要な危険因子であるからです。このことは、米国のフラミンガム・スタディ(長期間にわたるフラミンガム地区の住民を対象にした心血管系疾患の危険因子を探る調査研究)や九州大学が行っている久山町の調査などで実際に明らかにされています。
 日本では、近年高血圧治療の普及により脳卒中、とくに脳出血の発症率は低下傾向を示していますが、心臓病の発症率は逆に増加する傾向がみられます。その理由は、虚血性心疾患では高血圧だけでなく、肥満、高脂血症、糖尿病、インスリン抵抗性(糖尿病予備軍の状態)といった危険因子が重なって発症することが多いからです。これらの危険因子は食生活や運動、また喫煙など生活習慣に深くかかわっているため生活習慣病といわれているものです。高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病など1つ1つは軽症であっても、2つ、3つと重なると心筋梗塞など虚血性心疾患の発症率が高まります。軽症だからといって見過ごすことはできないことをぜひ知っておいてください。

ガイドライン・図解1999年WHO/ISH(世界保健機関/国際高血圧学会)ガイドライン
高血圧は,血圧以外の危険因子が重なると心臓病に対する危険度が高まります。WHO/ISHでは,高血圧とその他の危険因子を併せて,脳卒中・心筋梗塞を起こす危険度を表にしています。

 

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高血圧は心肥大・心虚血を招く
高血圧が招く病気・イラスト 高血圧の状態が長く続くと、全身に血液を送りだす心臓の左室はより強い力が必要となり、左室の壁が厚くなるという左室肥大が起こってきます。これは、心臓の筋肉をつくっている心筋細胞は数を増やすことができないため、それぞれの細胞が大きくなることで力を出そうとし、それに伴い細胞と細胞の間にある線維組織が増加して壁を厚くするためです。これ自体は生理的な適応といえます。しかし、こうした左室肥大が起こってくると、心臓に養分と酸素を送り込む冠動脈や毛細血管にさまざまな異常がみられるようになります。まず、冠動脈の太い血管では部分的に血管を狭める粥状の動脈硬化がみられるようになります。小動脈では中膜の肥厚が起こり、血管の内腔を狭めます。そして末梢の細動脈では、心筋細胞が肥大しているために血液を送る量が追いつかないようになってきます。これでは、いつも心臓や血管が無理している状態ですので、たとえば運動時など心筋に送る栄養(血液)を多く必要とするときに、血流量を増やす力(予備能)が出にくいことになります。このように冠動脈の血流量の調節異常が起こってくると、心筋に必要な血流量が得られない虚血状態になりやすく、狭心症や心筋梗塞、心不全といった虚血性心疾患の発症につながります。

 

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心臓病の予防──高血圧を放置しない
医師の指示に従う・イラスト すでに高血圧と診断されていても、心臓病の発症を防ぐために、病院で心肥大の有無を調べてもらうとよいでしょう。医師の指示にしたがい、まず高血圧を治療し、ほかに肥満、高脂血症、糖尿病などの合併症があれば、それらの治療も併せて行う必要があります。肥満、高脂血症などは、過食や動物性脂肪の多い食事をさけるといった食生活の注意や定期的な運動、そして禁煙など生活習慣の改善も必要となります。
 心肥大があっても、高血圧同様、初期は自覚症状がないため放置されがちです。心肥大の治療は高血圧を何年も放置したことにより起こってきたのですから、高血圧治療を根気よく継続することで心肥大の退縮も望めます。不幸にして心肥大があり、虚血性心疾患がある人は、適切な治療薬がありますから、医師の指示にしたがって治療するようにしてください。

 

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ONE POINT:高齢者高血圧の注意点

 高齢者の高血圧の特徴の1つに拡張期血圧(下の血圧)はほぼ正常値を示しても、収縮期血圧(上の血圧)だけが基準より高いという場合がよくみられます。この場合も当然治療は必要です。
 高齢者の高血圧では血圧の調節がうまくいかずに、起立性低血圧(立ちくらみ)、食後低血圧、入浴後低血圧など起こしやすくて危険です。十分注意してください。また降圧薬を服用する場合は、ゆっくりと少しずつ目標の血圧値までさげることが大切です。

 

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