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高齢者の心不全

弁膜症による心不全

心臓には左右の心房と心室、あわせて4つの部屋があり、各部屋の間には、血液が一方向に流れるよう、片開きの扉がついています(図8)。この「弁」が開閉することで、スムーズに血液を部屋のなかに溜めたり、外へ押し出したりしています。弁膜症は、弁の異常による病気の総称で、弁の開きが悪くなって血液が流れにくくなる「狭窄症」、弁がうまく閉まらず、血液が逆流する「閉鎖不全症」があります。

図8:心臓の4つの部屋と弁

図8:心臓の4つの部屋と弁

4つの弁のうち、こうした異常が起こりやすいのは、心臓の左側にある僧帽弁と大動脈弁です。なぜなら、これらの弁には、全身に血液を送り出すために、常に大きな力がかかっているからです。

弁膜症のなかでも、高齢者に多くみられるのが「大動脈弁狭窄症」です。左心室と大動脈の間にある大動脈弁が硬くなり、一部が石灰化して開きが悪くなるもので、加齢による動脈硬化が一因といわれています(図9)

図9:弁膜症の状態

図9:弁膜症の状態

大動脈弁が十分に開かなくなると、心臓は狭い扉のすき間から、強い力で血液を送り出さなければなりません。そのため、左心室のなかは圧力が高い状態が続き、左心室の壁(心筋)が分厚くなってしまいます。これが「左室肥大」です。厚くなった心筋には、十分な血液が流れていかず、酸素不足が生じて胸痛などの症状が出たりすることがあります。一方、脳にも十分な血液が送れなくなり失神を起こしたりします。また、左心室への無理がたたって、心臓がバテてきますので、動悸や息切れなどが現れます。

治療は、悪くなった弁を切除し、人工弁を取り付ける人工弁置換術という手術が主となります。通常は、人工的に作った「機械弁」が用いられますが、高齢者には、ブタなどの心臓弁から作られた「生体弁」が用いられます。なぜなら、機械弁は長く使える一方で、血栓ができやすいため、抗凝固薬という血液をサラサラにする薬を飲み続けなくてはならないからです。高齢者でもこうした手術ができる場合は手術を行いますが、最近では、手術が困難な場合でも、カテーテルを使って大動脈弁を置換するTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)という新しい治療法が普及し始め、かなり高齢の患者さん、リスクの高い患者さんでも治療が行えるようになりました。

また、大動脈弁狭窄症に次いで心不全の原因となりやすい心臓弁膜症に「僧帽弁閉鎖不全症」があります。僧帽弁の閉まりが悪く、左心室から左心房に血液が逆流してしまうために起こるもので、逆流の程度が進むと心房細動などの不整脈が起きたり、肺うっ血、心不全などの症状が悪化します。治療は、弁置換術のほか、弁の悪い部分を切除したり、縫い縮めたりする弁形成術が行われています。

弁膜症の多くはゆっくり進行するため、初期にはほとんど自覚症状がありません。しかし、気づいたときには心不全になって、取り返しのつかない状態になることもあります。「以前に比べて疲れやすくなった」「少し動くだけで息切れがする」など、わずかな初期サインを見逃さないようにし、こうした症状を感じたら、早めにかかりつけ医に相談して、心エコーなどの検査を受けましょう。弁膜症による心不全は、“防ぐことのできる心不全”、”根本的な治療ができる心不全“でもあることを忘れないでください。

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