家庭用心電計を上手に利用しよう

監修:小沢友紀雄(MJG心血管研究所所長)

どのような人が
どのようなときに
使ったら
よいのでしょうか

家庭用心電計の使い方は、大きく診療用と予防用に分けることができます。すでに動悸や胸痛などがあることがわかっていて、異常を感じたときに計測して診断の補助とする場合や、疾患があってジョギングや散歩などをしていいかどうか判断する場合のチェックに使うこともできます。

一方、病院には行っていなくても、何らかの不調を感じている人もいれば、まったくの予防のために計測する場合もあるでしょう。いつでもどこでも簡便に計測できる家庭用心電計にはさまざまな使い方があり、これからの予防医学に大きな情報をもたらす可能性があります。

先日、あるスポーツクラブで、2つの電極を胸に着けるタイプの携帯型心電計(CG6106)を使って、希望者に運動中の心電図を計測してもらいました。すると何も症状がなく毎日クラブに通っていた一人に虚血性心疾患を疑う波形が現れ、病院に行ったところ、冠動脈に重大な異常がみつかり、バイパス手術を行った例がありました。

また、マラソン大会の前に計測した結果、心房細動のある方が予想以上に多いので驚きました。心房細動があっても軽く走ることは可能ですが、脈拍が多くなりやすく、汗をかくと体内の水分が少なくなり血液が濃縮して血栓を作りやすくなるため脳梗塞の危険が増えるので注意が必要です。
また、家庭用心電計は心房細動の日常のチェックに大きな役割を果たす可能性があり、それについては後述します。

このように、健康診断などのときの安静時の心電図検査では見つからない心臓病が、日常生活中のふだん運動している場所で簡単に計測できるのです。スポーツジムやマラソン大会など運動する場所で心電図を計測すれば、本人の負担にならずに病院で行う運動負荷心電図と同様のチェックができることになります。

また、日常の生活中の症状のチェックで異常所見が記録されることがあります。図4は症状のないときの心電図ですが、入浴後に胸部圧迫感が出現したときの記録を図5に示します。32秒間にV5とV3相当の誘導の記録がなされていますが、両誘導ともに症状出現時に明瞭なST低下が見られます。この例は左冠動脈の主幹部に90%以上の狭窄を認め、バイパス手術が行われ、その後経過良好です。

図4
図4 症状のないときの心電図
図5
図5 入浴後に胸部圧迫感が出現したときの記録

家庭用心電計を使用することで、日常生活での行動で異常所見がないことを自分で判断できることが、大きな支えとなることがあります。異常所見がないことの確認も、異常を見つけることと同様な価値があるのです。

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